脅威ベースのペネトレーションテスト、TPLTとは?企業のセキュリティ強化策
総合セキュリティ

脅威ベースのペネトレーションテスト、TPLTとは?企業のセキュリティ強化策

TLPT(Threat Led Penetration Test)は、企業のサイバーセキュリティ体制を強化するために実施される「脅威ベースのペネトレーションテスト」の一種です。従来のペネトレーションテストと異なり、TLPTは特定の脅威を想定し、それに対して企業がどの程度防御できるかを評価します。この手法は、実際に企業が直面し得る攻撃シナリオに基づいて行われ、現実的な脅威に対する準備を進めるための有効な手段です。

例えば、ある企業がサイバー攻撃を受けると想定される状況では、攻撃者が脆弱なシステムや従業員の不注意を利用して不正にアクセスし、機密情報を盗み出そうとします。このシナリオを基に、TLPTでは攻撃者役となる専門家(レッドチーム)が実際に疑似攻撃を行い、企業の防御力をテストします。重要な点は、TLPTは防御側が持つ具体的なリソースやセキュリティ対策を検証するため、実際の攻撃に近いシナリオを用いることです。このため、従来のツールベースの脆弱性診断とは異なり、より現実に即した脅威への対策強化が期待できます。

TLPTでは、特に企業が直面する可能性が高い脅威に対して、その防御力を細かく評価します。例えば、外部からのフィッシングメールによる攻撃や、従業員の端末がマルウェアに感染するシナリオを設定し、それに対してどの程度早く防御や対応が行われるかが検証されます。攻撃側と防御側が実際にリアルタイムで対峙することで、企業は自社のセキュリティ体制の弱点を明確に把握し、改善すべきポイントを洗い出すことができるのです。

TLPTが特に効果を発揮するのは、金融機関や大手企業といった高度なセキュリティが求められる環境です。金融業界では、2018年に金融庁がTLPTの導入を推奨したことで、その認知度が高まりました。このような企業において、単にシステムの脆弱性を探すだけでなく、経営層を巻き込んだ包括的なサイバー攻撃耐性を評価することが重要視されています。TLPTは、経営層がサイバーセキュリティのリスクを理解し、組織全体として対策を強化するための実践的なアプローチです。

また、TLPTは攻撃者の視点からも防御側の視点からもテストを行うため、一般的なペネトレーションテストよりも多面的な評価が可能です。攻撃者がどの経路から侵入し、どのように内部情報を取得するか、また防御側がその脅威をどの時点で発見し、対応するかが詳細に報告されます。この結果に基づいて、企業はセキュリティ対策の具体的な改善策を計画し、実際に導入していくことが求められます。

TLPTは、現代のサイバー脅威に対する防御力を高めるための効果的な手法です。特定の攻撃シナリオを通じて企業のセキュリティ体制を総合的に評価することで、より実践的なセキュリティ強化が実現できます。エンジニアとしては、このような実践的なテストを通じて自社のシステムの脆弱性や防御力を確認し、日々進化する脅威に対する対策を常に見直すことが重要です。